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発刊宣言

「真に重大な哲学上の問題はひとつしかない。自殺ということだ。人生が生きるに値するか否かを判断する、これが哲学の根本問題に答えることなのである」(『シーシュポスの神話』アルベルト・カミュ)。さればアナキズムとは我々にとって何なのであろうか? 先のカミュの哲学的問いに引き付けて言えば、「人生とは生きるに値するものである。しかしさらに言えば、よりよく生きなければならない」。そしてアナキズムとは、このような熱烈な「生の賛歌」を基底にした社会変革の理念とでも呼べるのかもしれない。十九世紀において、社会構造、人間の社会的諸関係そのものの変革を企図する、まさに革命思想として花開いたアナキズムは、その後アナキズム運動内に様々な潮流を生んだ。それ以降は運動論や組織論、果ては人間社会に対する認識の仕方等々の差異や位相の違いから、良くも悪くも「思想としてのアナキズム」が内包する多様性に対する寛容さを損なわせ、「自由、平等、友愛」という理念に対する忠実さを競うことが、変転してセクト間の争いへと転化してしまった歴史であるとも言える。アナルコ・サンジカリズム、アナキスト・コミュニズム、ソーシャル・エコロジー的アナキズム、プリミティヴィズム的アナキズム、etc。それでは我々はこのようなバラバラの形容詞付きの「アナキズム」を、形容詞なしの「アナキズム」に統合することを目指して雑誌を発刊しようというのか。否、そんなことはどうでもよいことであるし、不可能なことである。そもそも我々は出自、社会的階級あるいは階層、さらにいえばアナキズムの捉え方に関しても何一つ共通するものはなく、「思想サークル」の体裁さえ整っていない。その意味で誌名を「アナキズム」と付けたのは不適切かもしれないが、我々を取巻く諸権力の解体を従来の古典的枠組みからはみだすような形で追究する試みが必要であるというのが我々の共通認識であり、また唯一の共通テーマでもある。そしてそれはどのような形であれ社会にコミットし変革の方途を模索したいという希求が皆にあるということでもある。最後に、何よりもこの雑誌を手に取った貴方がたには、一読者という立場ではなく、新たな社会的潮流を創っていこうという我々の企図の同伴者となってもらいたいと切に願う。(『アナキズム』創刊号より)